体験談・4(Dさん)(自閉症スペクトラム者)
2019年12月より指導開始
2020年7月末記入
Q1:申し込む前のこと
どういうことで悩んでおられましたか?
どういうことを解決したいと思われていましたか?
一時入院しましたが、病院内でも暴力をふるってしまいました。
「薬をあわせたから退院を」と言われて家族でみていけるのか不安だった。
思春期でありあまる“力”をおさえられるのか、家族に暴力をふるい続けるのか、この状態がいつまで続くのか、耐え続けなければいけないのか、心おだやかに過ごせる日々はくるのか、ただただ不安でした。
Q2:今、どうなっていますか?
(申し込む前の悩みの変化、あなた様自身の変化、お子さんの様子の変化など)
「この手術をすれば治ります」「この薬をのめば治ります」というようなことはないので、この運動が「何にきくの?」と謎だらけでした。不信感ではないけれど、確信できるものがなかった。
積み重ねてきて、小さな変化がみえてきた時、進む方向はまちがってなかったんだとブレずにすすめることができました。
子どもは、「イライラしない」「おちつけ」と自分に言いきかせて衝動性とたたかっています。
Q3:具体的によかったところは、例えば、どんなところですか?
自分が子どもに対して思っていた
「そんな事されると、こわい」
「いたいからいやだ」
「暴力をふるう姿をみるのはこわいし、いやだ」
ということを直接子どもに話て伝えてみました。
子どもは、
「えっ?そんなふうにおもってたん?」
と感じているようで、不適切行動が減ったように思います。
たたいたり、物をこわしたりすれば、他人からきらわれる、そんな人は好きになってもらえない。反対に、お手伝いや指示にしたがってやることをやれば、ほめられて、うまくいけば自分の希望もかなえられると学習してくれたようです。
Q4:印象に残っている具体的なエピソード、感動した・心が動かされたエピソードは、どんなエピソードですか?
人にあたらなくなってきてはいたのですが、物にあたることがあります。
先日もタブレットの起動スイッチをおしこんでしまって、どうにもならなくて、私のところに持ってきて動かすように催促してきましたが、どうにもなりません。
「誰がやって、こうなったか?」
を丁寧に根気よく説明し、私でもどうしようもないことを伝えると納得したように何にもあたらず、
「こわしちゃった」
と言って自室にもどりました。
以前は、状況がよくなるか、次に買ってもらえる約束を取り付けるまで、あーだこーだと抗議したり、暴れて自分の言うことを聞いてもらおうとしたり、自分の納得いく答えが出るまで暴れていましたが、
「こわれてしまった。これ以上の進展はない」
ということがのみこめたようで、暴れることもなく戻れたことが「すごい!成長している!」と心の成長を感じた時でした。
<補足>
【Q2に関して】
『自分に言い聞かせて、衝動性とたたかってい』るエピソードを聞かせていただきました。
・母と兄のちょっとした言い合いがあって、以前ならそういう様子を見ると暴れていたのが、自ら近寄ってきて「イライラしない」と言った(記載のあった「イライラしない」のエピソード)
他には、
・お兄ちゃんがすぐに動かなくても壁やドアにあたることなく、自分の言ったことがうまく伝わらなかったのかと思ったのか、母のところにきて「お兄ちゃん、起きて(起こしてといいたかったらしい)ゲームしよう」と繰り返して、お兄ちゃんが起きてくるまで穏やかに待つことができた
・声の大きい男性が上階から降りてくるときに、騒いだりせず、鉢合わせしないようにエントランスの外で、その男性が通り過ぎるのを待ってからエントランスを抜けることができた
【Q3に関して】
どういう心構えをもつかということで、メールで相談のやりとりをしていて、お伝えしたことがあります。
***
大事のは、気持ちのやりとりです。
どうしても「マルかバツか」「良いか悪いか」だけになりがちです。
善悪を伝えることは必要ですが、案外、正直な気持ち、周りが感じて思っていること、を言われていないのです。
空気を読むのが難しいわけですから、言われていないことは分かりません。
言われていないことは無いに等しいのであり、言われていないこと=悪いことではない・受け入れられていると勘違いをしていまう場合もよくあります。
感じたままを言います。
「暴れられら怖いわ、そういうのは嬉しくない」
「学校でも、家でも、叩いたり、蹴ったりされたら、ドキドキして、心が痛いわ」
「心はここにあって、ここが痛い」
「叩いたり、蹴ったりせずに、我慢できるDくんは好きだ」
善悪だけではなくて、こういう気持ちのことを、そのまんま話してやってください。
***
これを実践されたということになります。
【Q4に関して】
行動がどうなったというもの大事ですが、やはり「心の成長」を感じられた時というのが一番心が動かされます。
もちろん自傷や他害はしなくなるようにせねばならないのですが、「心を育てる」というのが目的でもありますので、本当に嬉しく思います。
親子のやりとりを通して、子どもは努力を評価された喜びを感じ、それを親御さんが喜び、自分の親が喜んでいるのがまた嬉しいという循環がうまれたことが重要です。
・物にあたることに関して
以前は、
『2日に1回ぐらいのペースだったかもしれない』
とのことでした。
現在は、
『「できない」「成功しない」「ゲームに勝てない」のが続いてしまって「あー、いらいらする」と壁や机をガンとやるぐらいです。1週間のうちであるかないかぐらいでしょうか。イライラしはじめたなと思った時に落ち着かせるので、それが本人にも定着しクールダウンし切り替えができています』
とのことです。
『「今はそれはできない」などの聞き分けも良くなっています』
いうことです。
この「イライラしはじめたなと思った時に落ち着かせる」方法が、運動を通して、親子で身につけられたものです。
運動を通して…
・動きの発達、神経の発達を促し
・自分の身体と身体の動かし方をつかみ
・学習や生活の土台としての身体をつくり
・感覚器の発達を促し、感覚を育て
・無意識に動いてしまう多動な身体を、意識的に(意図的に)動かせるようになり
・見る力、真似る力、聞く力、聞き分ける力をつけます。
そうした結果、
・衝動をコントロールできる力
・辛抱強く頑張る力、試行錯誤する力
・相手に合わせる力、待つ力
これらを身につけることができたのです。
そして、それらを通して、
・自己肯定感を育み
・コミュニケーション力を伸ばす
つまり、社会性と対人関係を成長させることができてきています。
半年で他害はほとんどなくなりましたが、これから他害や物損をゼロにしていきます。