体験談・3(Kさん)(自閉症スペクトラム者)
【相談】
「学校や施設が改善してくれると思っていた」
そして、
高校3年生になってから、相談を受けました。
「『どこも行き先はありません』と言われたんです」と。
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これは他の方もおっしゃっていたことなのですが、
何をどうしたらいいのか分からない不安な子育ての中で、
“癇癪を起こさせないようにしましょう”
“無理をさせないようにしましょう”
“こだわりを保障しましょう”
“叱ると叱られたことしか記憶に残らないので叱らないように”
“失敗しないように配慮する”
こういうこと医療や福祉、学校などのアドバイスとしてもらっていた、と。
しかし、ここから導き出される結論は、
「『腫れ物に触らない』ということに、今は思える」と。
触らないで、介入されないで育ってしまったら、本人はどう振る舞ったらいいのかを身につけられず、路頭に迷うことになってしまった。
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【親御さんとのお話し】
物(本やぬいぐるみ)が無くなると癇癪を起こして、暴れた。
必死になだめて、もう一度買いに行った。
でも、もう売っていなかった。
「他の店で買おう」
と伝えても、
「ここで買う!」
と、店で大声で騒いだ。
説得していると、
「あの子は買ってる!」
と騒ぎ、叩きに行くのを必死で抑えた。
そうならないように、いつも同じものを二つ買っていた。
『なぜ「無くしてら、もう買わない」と子どもに言えなかったのでしょう?』
(もちろん、こういうことを聞くのは関係ができてから、良くなってからであり、相談の最初には話すような内容ではないです)
親御さんは、とても一生懸命で、子どものことを考え、子どもの言うとおりにばかりはしてはいけない、と考えておられました。
しかし、言えなかった、やれなかった。
それは、
「他人に怪我をさせるのが怖かったから」
本当に本当に大変だったと思う。
他には、上記したような医療や福祉、学校などでのアドバイスもあったから「そういう風にした方がいいのか」とも考えた、と。
怖さを抱えつつも、他人がいないところでやれることはやろうとされた。
“子どもの言うがまま・思うがままにしてはいけない”
そう言う人もいたから。
言うがままにしないように挑戦もした。
「でも、暴れるばかりでダメだった」
「ペアトレ(ペアレントトレーニング)もした。何に困っているかを伝えて、それを練習して…でも変わらなかった」
【今】
高校3年生の5月から月に一回の指導を始めました。
大声を出す、叩く、蹴る、こだわりに融通がつけらない状態でした。
「叩く・蹴る」ことはなくなり、声や融通はほとんどないがまだ取り組み継続中。
仕事に取り組む力も身につけて、B型の事業所に通えるようになりました。
「もっと早く出会っていればよかった」
とおっしゃった。
「(ペアトレとは違って)一緒にやってくれた」
「実際に変化を見せてくれた」
そういうことも言っていただいた。
しかし、
「親がやらなきゃいけないと覚悟できた」
それが一番大きいと思う。
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親御さんも苦しかったですよね。
お子さんも苦しかったのだと思います。
親から褒められていないことくらい分かっているから。
でも、自分では止められなかった。
ルールを守れるようになること。
親に、人に、合わせられるようになること。
自分をコントロールすること。
それは、親御さんも子どもも幸せになるために必要なことです。
言うのは簡単だけれど、実行するのは大変。
実行しようとしても挫折し続けてきた。
親御さんにも、子ども自身にも、失敗感がある。
それを親と子が乗り越えるために、一緒にいて、その都度子どもの気持ちを解説して、実際にやることをコーチしてくれる人が必要だったんですよね。
そんな話をした。
お子さんは、そんな話をニコニコ聞いていました。