発達に凸凹があっても『少しでもできるようになりたいと願っている』

「簡単ではない」、けれど、あきらめずに工夫を提供する

【つらい思いをさせたくない

 『怠けてなんかない! 0ゼロシーズン ディスレクシア 読む・書く・記憶するのが苦手になるのを少しでも防ぐために』

竹田契一・監修

品川裕香・著

岩崎書店

2011年2月1日 第1刷発行

 

 この本から引用する。

 

 **引用**

 

 ・p.20

 

 コラム 子どもにあきらめさせてはいけない

 

 取材していてとても切ないのは、実に多くの子どもたちが小学1年生などといった早い段階で「自分はみんなと同じように字を覚えられない」「読んだり書いたりすることができない」と気がつくことです。

 子どもたちはそんな自分の状態像を「このままでもいいじゃん」などとは思いません。だから、毎晩深夜まで字を書いて練習するなどして必死の努力を続けます。ところが本人は(保護者や教師も)特性に気がついていないので、続けるのはひたすら方向性の違う努力です。だからどうしても努力の費用対効果は悪く、また成果もなかなか出ません。

 その結果、「自分ができないのは自分の努力がたりないからだ」と自らを責めるようになり、あるいは保護者や教師から「やる気がないから成果がでない」と責められ、やがて「努力してもできないのは自分がバカだからだ」と理解していきます。

 そして、たいていの子が小学校高学年になるころには「自分はどうせバカだから努力してもしょうがない」と自らをあきらめてしまうのです。

 取材をしていて、どれだけ多くのディスレクシアの子どもが「だって、私、バカだから」と自嘲気味に笑ったり泣いたりすることか……。子どもたちが繰り返して訴えるのは「お医者さんに言われなくても自分が読んだり書いたりできないことはわかっている。私が知りたいのは、どうやったらできるようになるかということ。私だって勉強ができるようになりたい、テストでいい点を取りたい」ということなのです。

 子どもたちが求めているのは“誤答をなにがなんでも正答にしろ”というようなことではありませんし、“ADHDでじっとできないのは自分の個性だから好きにさせろ”というようなことでもない。どの子もみな、“できないこと、苦手なことが少しでもできるようになりたい”と願っています。そのことを大人は忘れてはならないと思うのです。

 

 **引用ここまで**

 

 

 重度か軽度かに関係なく、できるようになりたいと思っているし、できたら嬉しくなる、そういうことをたくさん経験してきた。

 言葉もなく、表情にあまり変化がなく、思いを読み取りづらいような子(人)でも、できた瞬間に表情が明るくなる。この瞬間を作ってあげなければいけないと思う。

 

 言葉のない子(人)だと「バカだから」と言うことはない。

 行動障害と思われている子(人)は、そういう「思い」「あきらめ」があるように思われず、あたかも好きでやっているように見えることがあるために誤解されている場合がある。

 言葉では表現できないが、行動を通して「叫んで」いる、「訴えて」いる。

 

 「このままでいい」とは思わない。

 できるようになりたいし、褒められたい、認められたい。

 

 「ありのままでいい」と言うとき、どういう意図で言っているのか考えなければならない。

 「ありのままでいい」という言葉で、自信を得る機会、できるようになる機会を奪ってはいけない。

 

 自分たちも、どんなテストでも100点が取れる人間ではない。

 誤答を正答にできないことなど沢山ある。

 そうであっても、『少しでもできるようになった』という成功体験、自分も捨てたものじゃないという誇りで支えられて生きている。

 だから、張り合いのある生活ができる。

 いや、小さな成功体験を土台にして、張り合いのある生活にしようとしている。

 

 『知りたいのは、どうやったらできるようなるかということ』

 それを提供するのが仕事である。

 

 

 表紙をめくると、

 **引用**

 

「気になるところがあるけど、もうしばらく様子をみよう」では、遅いと言わざるをえません。

親の言うことを聞かない、友だちと遊べない、文字に興味を示さない、あやとりが苦手、よく転ぶ……。小学生になってつらい思いをする前に、子どもの苦手さを探し、訓練を始めてください。

 

 **引用ここまで**

 と書いてある。

 

 その通りである。

 つらい思いをさせたくない。


かくたつ播磨

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