支援の話の前に
【知識や技術について語る前に】
施設職員研修の抜粋(3)
・僕が初めて出会った自閉症の人
爪を歯にカチカチと当てながら、ずっと廊下を行ったり来たりしている人。
部屋の隅っこで寝転んで、独りきりで指を回し続けている人。
ある人は、あまり作業が出来ないらしく、毎日の日課は散歩であり、散歩途中にコーヒーを飲んでいました。
その人は夜も眠れず、コーヒーがある自動販売機に向かうため、開けられない窓を開けようとしていました。
職員さんは、その人を苦笑しながら眺めていました。
・何を感じられるでしょうか?
自閉症って、こんな感じですよね。
自閉症だからですよね。
コーヒーが大好きなのかな。
ストレスがあるのかな。
僕が感じるのは「そんな人生つまらん」です。
生きがいはあるでしょうか?
幸せそうでしょうか?
張り合いもって生活している姿でしょうか?
役割や達成感はあるのでしょうか?
どういう人間関係の中で生きているのでしょうか?
夜も眠れないことに痛みを感じられるでしょうか?
・自閉症だとか問題行動だとかいう前に、人として考えるべきこと
知識とか、技術とか、その前に…
障害のある人とどう付き合うか。
「衣食住さえなんとかなればそれでいいと言うものではない。人間が人間らしく生きるためには、その先の世界が必要なのだ」
「ただ、自分の存在はだれかのために、何かのために必要なのだ、ということを強く感じさせるものを求めてあえいでいる」
神谷美恵子さんは『生きがいについて』でこのように書かれました。
・叫び
「自分の存在はだれかのために、何のために必要なんですか!」
「誰か、教えて!」
「どうしたらいいのか、分からない!」
コーヒーに、自動販売機に、突進するしかない…
そんな行動を
この“叫び”として聞けるかどうか
・支援者として
苦笑いするしかないような事情があったのだろうと思いたいですが、
もし苦笑いで済ませていたとしたら…
支援方法がどうのこうのという前に
どういう人付き合いをしていくのか
そこをハッキリしていかないと
方法に溺れる
目的を見失う
支援に行き詰まる
という状況になっていくと考えます。