出来ないことを出来るようにする、「分からない」と「分かった」にする
【成功体験で得た自信をもって、生活をはりあいのあるものにしていってほしい】
僕も、彼ら彼女ら自閉症児・者も同じ人間です。
「出来るようになったら嬉しいよ、自信がつくよ」
「心の支えになるものがないと、生きていくのはシンドイよ」
「努力して、何かが出来たという達成感は代えのきかない体験なんだ」
ということを伝えたいのです。
ほんのちょっとでもうまく行ったら、評価される。
すると、ちょっとだけ自信がつく。
その自信とうまく行った経験があれば、次のハードルも超えてみようと思える。
その繰り返しが、良い循環を生みます。
たとえ一つ覚えでもいい、自分自身に確実に心の支えになるものを自分の努力で獲得してほしいと思っています。
そして、何かが出来るようになることに出会えるのは、何より嬉しい瞬間です。
なぜ、成功体験、努力による獲得のことを言うかというと、それは、「できた!」「わかった!」という「成功体験」「喜び」が発達の最大の原動力・推進力だからです。
そして、成功体験は、親子の自信につながります。
その自信が生活をはりあいのあるものにしていきます。
ただ、何らかの発達につまづきがあると、分かりづらさがあり、また身体発達でクリアしていないところがあって、うまくできないことがあります。
試行錯誤しても、なかなか出来ないので、諦めそうになります。
だからこそ、何につまずいているのか、何を発達の中で抜かしてしまっているのかを分析して、乗り越えられるように、どれだけの工夫ができるかが大切です。
その工夫をお伝えしています。
例えば、「右と左の区別」や「ギュッと持つこと」。
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Q3:具体的によかったところは、例えば、どんなところですか?
子どもに伝わる方法を具体的にわかり易く教えて下さることです。
これまで何気なく喋って通じていると思っていたことが、実は全く通じていなかったことがわかりました。
抽象的な言葉を見える形で教えることが必要でした。
例えば「右」「左」。
一般的にいう「お箸を持つ手」「お茶碗を持つ手」では通じない。
「みぎ」「ひだり」と書いた紙をそれぞれの手に持たせて「右手上げる」「左手上げる」「右に歩く」「左に歩く」を何度も繰り返すことにより、理解できるようになりました。
「ぎゅっと持つ」「そっと持つ」。
ゴムチューブをテーブル上で押さえさせて、私が引っ張る。
「ぎゅっ」と押さえるとゴムチューブは動かない。
「そっ」と押さえるとゴムチューブはするっと抜ける。
これを体感し、目で見ることで言葉の意味を理解しました。
誰もが当たり前に使っている言葉の意味を習得するためには通常の何十倍もの時間と労力を必要とすることがわかりました。
心が折れそうです。
しかし、それは同時にこれだけのことをすれば理解できるようになる、ということであることもわかりました。
子どもの「わからない」を見つけて一つ一つに取り組んでいく。
一人ではできないことをサポートして頂きながら少しずつ前進できていること実感しています。
(補足;時計の学習。コツを伝え、時計がよめるようになってもいます)
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この人にどうやって伝えるか。
何が分かっていなくて、どういう方法なら「できた!」「わかった!」になるのか。
それをトコトン追求しています。
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時計学習について、ゆっくり考えながらですが、随分と読めるようになりました。色々な時計で読めています。「あと○分」はまだ難しいようなので、まずは「○分になったら~をする」の練習をしています。その時間が来てもなかなか自分から報告はできませんが、時計は意識しているようです。「△分」「×分」と言ってる時もあります。
右・左は随分定着してきました。生活の中でも右の~、左の~と言うと通じるようになってきたので嬉しいです。「いちばん右」もなんとか分かっているようです。
「いちばん多い」はまだ理解できていないようなので、次はこれにも取り組みたいと思います。なかなか言葉の意味が通じないけど、ゆっくり一つ一つ教えていけば、理解できるようになるのだなぁと感じました。「分からない」を見つけることが様々な理解につながるのですね。
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「前」「後」も理解できるようになりました。
また、苦労していた課題(「誰」と「何」の区別)もクリアしつつあります。
運動面でも、「親御さん(母)のペースに合わせて歩く」ということもできるようになっています。
これも、つまずきの分析、身体の発達、成功体験の積み重ねの成果です。
もちろん、親御さんと本人の努力の成果でもあります。
ただし、成功体験とそれによって得た自信だけでうまくいくということではありません。
生きていくためには、粘り強さ、「やり抜く力」が必要です。
そういう力を身につけていくためには、成功体験や愛着体験を得た上で、『適度な失敗』を経験することも必要です。
そうして、総合的な<生きる力>を自分のものにしてほしいと考えます。