自閉症児者 大声(奇声)を出すのが止まらない

声を出したくて出しているのではない

【本人も困っている】 

ある日、Bさんが「子どもの声が止まらない」とのことで、緊急でやってきた。

 

自閉症で、知的には重度の子どもさんである。

・昨日から、ずっと大声を出して止まらない、声を出すのが止まらない
・「声を出しません」と書いて見せたり、お口チャックの写真カードを見せても、何を言っても、何をしても止まらない
・家族も滅入ってしまっている
とのことだった。
家族も困っておられる。
それと同時に、本人も止められなくて困っている。
本人だって止めたいに決まっている。
止めたいのに、止まらないから苦しいのである。


叱っても止まらない。
叱って止まるようなら、もう止まっているはずである。
書いて見せたり、言って聞かせたりするようなことは、すでに実行されている。
それでも止まらないのだから、ここでもう一度同じことをして止まるとしたら、相当に本人との関係性がある、もしくは、場面や人が変わったことで切り替わることもあり得る。
ここに来ても止まらなかった。
場面や人が変えることは効果がなかった、ということである。


関係性はどうか。
月に1回、運動を通してコミュニケーション(やりとり)をして、関係を作ってきている。
運動を一緒にし始めた。
運動はできた。
つながっているし、合わせようとする気持ち、聞く気持ちはある。
聞く気持ちがあって動けているのに止まらないのだから、本人の苦悩は計り知れない。
重要なことだが、この状況で、こちらの話を聞く・一緒に何かをする人間関係がなければ、何も助けられない。
話を聞いて、身体を動かせるのだが、声は止まらない。
雑で統制が取れていないような動きが整ってきた。


パターン的な声の出し方である。
出そうになった時に「声が出そうだよ、出さないように気をつけて」
止まったら、「そうそう」「それでいいよ」
カウントをすると、それも聞いて止めようとしているし、止まる。
しかし、少し間が空くと声が出る。
止めれたという成功体験を重ねていくことで止まることは多いにある。
が、今回は、それだけでは不十分。


声は止め切れていないけれど、かなり落ち着いてきている。
次に、イスに座らせ、腹筋に手を当て、話しかけた。
座ってもらって、腹筋を触るとカチカチに力んでいる。
声の出し方から判断するのだが、やはり腹筋に力を入れて出している声だった。
押し弛めしながら、話かけていく。
「イスに座ろう」というこちらの提案に乗ってこれる関係性が必要である。
腹筋がポイントだと分かっても、動きがバラバラで整っていない状態で座っても難しい。座っていられる状態にしてあげることも重要である。
 「ちょっと力を抜こうな」
 「自暴自棄になるなよ」
 「みんな心配しているぞ」
 「そんなに声を出していたら、C君もシンドイでしょう」
 「お母さんも困ってる、でも、C君も困ってるよなぁ」
少しずつ力んでいた腹筋の力みが弛んでいく。
声はスパッと止まった。


その後にいただいたメール
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指導してもらい、その後30分ほどで表情がすごく明るくなりました。
前日の様子を知っている、実家の両親は変化にとても驚いていました。
表情もですが、動きが滑らかになった感じで、別れのバイバイもとてもしっかり手を振ることが出来ていました。
声が止まったことは、主人も兄も姉も驚いていました。
本当にありがとうございます。
ニコニコ顔で少しテンションが高い状態は寝るまで続きましたが、前日までの声が出る状態はありませんでした。
頓服は使用せず、22時に眠り、朝まで起きることはありませんでした。
*****


自閉症だから声を出すものである、とは考えない。
声は止まる。
原因は、いろいろある。
・腹筋の力が抜けない
・パターン化してしまって止めれなくなっている
身体以外にも、
・家庭や学校で分からないこと、困っていることがある
・悩んでいることがある
・言いたいことがあるけれど伝わらない
そういうやって困った状態、苦しい状態にある子どもさんを、彼ら彼女らを助けたい。
僕は治ると考えている。
そのための準備として、
・身体を整えていくこと
・力を抜き、弛めること
・相手に合わせる力をつけること
・努力すること
を身につけていく必要があると考えている。
可能性を引き出し、幅を広げるためには、
・算数
なども必要です。
より良い生活を送ってほしいと思っています。


かくたつ播磨

店主・守本 悠哉(社会福祉士・公認心理師)

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