自閉症の人が与えてくれた宿題 9.内面との付き合い

本当に言いたいこと

【何をしているか(言っているか)ではなく、なぜするのか(言うのか)】

 6.の最後に「大声を出すのも、こだわりも、かんしゃく(イライラ)も、自傷も、他害も、物を壊すのも自閉症だからではない」と書いた。
 そのことについて、書く。
 こだわっているのにも理由や歴史があるし、かんしゃく(イライラ)にも理由がある。
 「イライラしていました」では済ませられない。
 自閉症の人にも悩みがあるし、言いたいことがある。
 しかし、うまく言えなかったり、行動でしか表せない場合が多いから、その行動を翻訳して付き合わなければならない。
 方法はいろいろあるが、その心・内面との交流がなければ支援ではない。
 一つ目の実習の施設で、開けられない窓を開けようとしている人を眺めて苦笑していた職員さんと利用者さんの間には、一緒にいる「人間関係」がなかったのではないだろうか。
 そうなると、ケース会議で「利用者さんの悩みを職員さんが悩んでいる」にならない。
 施設の外に出て行ってしまうこと、いわゆる無断外出という「施設の問題に対して悩んでいる」になってしまう。
 「なぜ入所しているか悩んでいるだろうか?」
 「なぜ自分は帰れないのかと悩んでいるのではないか?」
 「廊下を一日中歩き回っていたら当然疲れるよね」
 「ずっと部屋にいないで、やりがいのあることをやろう」
 「ホントは眠いよね、しんどいよね」

 このような人間関係のある、自閉症の人の悩みにそったことを考えたい。
 それが「一緒」だと考えている。
 そうやって、よい人間関係を築きたいのである。
 大声を出すのも、こだわりも、かんしゃく(イライラ)も、自傷も、他害も、物を壊すのも言いたいことがあるのである。
 自閉症の人からメッセージであり、SOSであり、「なんとかしてほしい」「教えてほしい」「導いてほしい」「説明してほしい」「もっとはりあいのあることをさせてくれ!」という叫びである。
 しかし、どうも子どもが言うこと・すること(行動)をそのままに受け取る傾向が多く見られる。
 『イヤだ!』と言えば、「嫌なんだね」
 『したくない』と言えば、「したくないんだね」
 大声を出せば、嫌がっていると受け取る。

 表出する言葉や行動のレパートリーが少なくて、『イヤ』と言ったり、暴れてしまったりするが、本当に言いたいことは、
 「これをやる自信がない」
 「この前、失敗してしまったから助けてほしい」
 「どうすればいいのかわからない」
 「やることはわかっているけど、不安なんです」
 というだったりするのである。
 本当に言いたいこと、子どもの内面(心)と付き合っていきたい。
 「食べない!」が「食べれないから助けて!」に聞こえるように。
 【何をしているか(言っているか)ではなく、なぜするのか(言うのか)】を考える。
 そうすれば、親子が、職員と利用者さんが、子ども同士が、かみ合った人間関係、食い違わない関係を作れる。

かくたつ播磨

店主・守本 悠哉(社会福祉士・公認心理師)

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