自閉症の人が与えてくれた宿題 4.初めて読んだ自閉症の人について書かれた文章について(3)

自閉症の人の行動をどう観て、どう捉えるか

【決めつけないで見れば、その人自身が見えて、内面と付き合える

 その文章を読んで以降、自閉症の人の行動を見たときに、「自閉症らしい」とか「自閉症の特性からくる」というような言葉を警戒し、疑い、使わないようにした。

 

 「個性だから認めよう」も同様である。
 本当に個性なのかどうかはわからない。こちら側が決めつけている部分も多い。

 

 「独りでいることを望んでいる」とか「コーヒーが大好きなんです」も同様である。
 これらの行動を「したくてしている」というのもこちら側の解釈である。
 それが本当に合っているのかどうか、本当にしたくてしているかはわからないことの方が多い。
 そういう勝手な決めつけはしないと誓っている。
 『他のことを教わっていないだけなのではないか』
 『他に体験していないだけなのではないか』
 『本当にそうしたいのかどうなのか』
 何を見ても、まずはそこから考えをスタートしている。

 

 もちろん、「したくてしている」場合もある。
 それ以外に、
 「したくないのにしてしまう」
 「したいのにできない」
 ということもあるのだと体験して知った。

 

 例えば、ものすごく食事になったら騒ぐ。
 尋常じゃない。ひっくり返す、噛みつく、「食べない」と連呼する。
 こういう事態になった原因を聞き取るが、これといった原因も見当たらない。
 好き嫌いでもない。昔は好んで食べていたメニューでも大騒ぎになる。
 「食べない」と“言う”から食べたくないのかと思って、「食べたくないのね」と伝えて食事を下げると、さらに大騒ぎになってしまう。
 もちろん、時間やスケジュールを提示したり、メニューを提示したり、そういうことはしたが、それでもなお大騒ぎはしずまらない。

 

 こんな大騒ぎであるが、食べられる応援をして食べれると、笑顔になったのである。
 この子は、
 「食べたくなかった」
 のではない
 「食べたかった」
 のだ、と実感した。

 ホッとしている、嬉しそうである、と感じた。

 

 逆に「食べたくなかったのにナンデ!?」というような様子は全く感じられないし、現実は、成功を繰り返していくほどに、この人の隣なら自分で食べられるようになっていった。信頼関係ができていったのだ。

 そこからだんだんと隣にいなくても自分で食べられるように支援していく、そうすると、以前のように食べられるようになったのである。

 

 この子の「食べない」は、
 「食べたいのに食べられない」
 「食べたいのに自信がない」
 「食べたいのに成功しそうにない(不安)」
 という訴えの叫びだったのである。

 

 今、この子は食事で全く騒ぐことはない。
 親子関係も良くなった。

 

 この子の「食べない」を言葉通りに受け取って、つまり『したくてしている』と受け取って支援していたら、どうなっていたのだろうと思う。
 提示する方法だけに頼っていたら、どうなっていたのだろうと思う。
 その親子はどうなっていたのだろうと思う。

 

 「食べたくない」と受け取っていたまま話しかければ、「食べたくないんだね、いいよ」という話になり、本人の内面とはかけ離れていく。

 「食べない!」と大声で叫んでいるのを聞いて、「そうか、そうか、自信がないんだね、本当は食べたいんだよね、失敗しないように応援するから、一緒に食べよう」と付き合っていけば、この子と信頼関係を築けていけるし、内面との交流ができる。

 

 先入観を捨て、決めつけず、したくないのにしてしまうということがあるのではないかと違う視点をもって付き合っていくから、今までと違う気づき(発見)があり、今までと違う付き合い方ができるのである。

 

 この「食べない」以外に、よくある言い方として「しない」「行かない」「イヤ」などがある。
 こういう発言も言葉のボキャブラリーが少ないから他の言い方ができなかったり、そこまで説明ができないから言ってしまうのである。
 言葉がない人でも同じで、こういうことを言いたいのだけれど、どう見ても「食べたくないような」行動をとってしまうのも、行動のバリエーションが少なく、他の行動が取れないからである。
 また、こういう状況になると、余計に言動の選択肢が狭まってしまい、パターン化した言動をしてしまう。そのパターンから自力で抜け出すのは難しい。
 そうしなくて済む応援がしたいのである。
 親子が、職員と利用者さんがよい人間関係を築いてほしい。

 

 「自閉症だから」「自閉症らしい」という言葉を使ってしまうことには、内面を見えなくてしてしまい、噛み合わない支援をしてしまう弊害がある。


かくたつ播磨

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