自閉症児者のこだわりとの付き合い方(1)

自閉症でも融通がきくようになります

【 融通がきくようになれば、心に余裕がもてて、楽になる

こだわっている状態が本当に安定・安心している状態なのかどうか。

実は、

「こだわりが少しでも崩れるとどうしようか」

「いつもこだわりの対象を見ておかなければならない」

というような窮屈で不自由な生活なのではないでしょうか。

 

 

【融通がきいて、自由で、少しのことでブレない安定した人になるために】

 

例えば…服の袖をまくると伸ばす。

もう一度まくると、また伸ばす。

チャックを下げると上げる。

もう一度下げると、また上げる。

 

この子(人)は、

「袖をまくりたくないんだな」

「チャックを上げておきたいんだな」

と思われることが多いのではないでしょうか。

つまり、「したくてやっている」と考えられているのです。

 

「したくてやっている」と考えるのは、見ている側が感じたり考えたりしていることです。

本当に「したくてやっている」と彼ら彼女らが考えているかどうか。

本当は、そういうこだわりにがんじがらめになった状態から抜け出したいと思っているのでないでしょうか。

窮屈で苦しいのではないでしょうか。

僕には、そう見えます、そう感じます。

彼ら彼女らが大声を出して騒いでいるのが、苦しい叫びに聞こえます。

 

 

同一性の保持は、物の位置だけではなく、同じ場所で、同じ行動を取るという行動にも見られます。

パターン行動と言ったりします。

例えば、

・ある場所でいつもクルッと回る

・ある壁の前に行くとコンコンとたたく

・あるガラスの前でかたまる

など。

こういうパターン行動も、

「したくてやっている」

「自閉症って不思議な人だな」

と思われることが多いのではないでしょうか。

 

不思議な人、自閉症らしい人というように捉えることは自戒しています。

そう捉えると、工夫しなくなるから。

そう捉えると、自分とは違う人間、別の人間、距離があり、一緒ではなくなるから。

まずは、

『その行動を「したくなくてもしてしまっている」のではないか』

『その行動から抜け出せなくて困っているかもしれない』

と考えます。

なぜなら、

支援すれば、しなくて済むようになる体験を多くしているからです。

関わっている親御さんや職員さんも体験されています。

誰かが支援して助けてあげればしなくて済むようになるはずだと考えています。

 

先日、職員さんから、

「『彼が困らせているのではなくて、彼が困っている』という言葉が心に残っています」と言っていただきました。

他には、

「『(そのこだわりで安定しているように見ているのはこちら側ですが)本人はそれに憑りつかれているだけでは?』という言葉を聞いて、変わった」

とも言っていただきました。

担当されている子ども(利用者さん)は、こだわりに融通がきくようになっています。

 

 

【融通がきくようになるような人にするためには】

 

・服の袖をまくると伸ばすもう一度まくると、また伸ばす

・チャックを下げると上げるもう一度下げると、また上げる

 

こういった解決へのハードルの低い行動(もちろん、子どもによって、どの行動がハードルが低いかはそれぞれ違う)をしなくて済むような力を身につけておく必要があります。

こだわり通りにならなくても、融通がきいて、かんしゃくを起こさずに済むように練習するのです。

実際には、課題を一緒にして、対物関係ではなくて対人関係ですること、褒めて認めてもらえることを体験するだけで、本人がこだわり対象にしているそのもので取り組まなくても、こだわり対象にしていたものへの融通がきくようになります。

 

そして、こだわりに融通がきかせることができたことを、本人が、誇りに思えるように、一つ成長したと思えるようにつなげていくことが大事です。

母親や家族の方々はがんじがらめになっていたので融通がきくようになると、

「こだわりに振り回されなくなって幸せを感じる」

「子どもといる時間が安心できている」

「可愛がれるようになった」

とおっしゃっいますから、

本人にも、融通がきくようになることは、母親や家族を喜ばせ、自分も褒められ認められて、嬉しいことだと伝えています。

 

それでも、なかなかうまくいかない場合は(実は行動へのアプローチと同時に)、パターン行動を「なぜするのか」を考えます。

一見すると不思議な行動であっても、本人なりには意味があって、何かそこで納得がいかないことがあったとか、何かそこで失敗したとか、そういうことがあります。

それに対して、

「あの時はこういう失敗をして嫌だったよね、でも次は成功するように応援するからね」

「あの時のことは、こういういことだっんだ、説明がなくて悪かった、ごめん」

こういう一回の説明でしなくなってしまうこともあります。

 

 

【こだわることの問題は、

 子ども自身の社会生活、家族の社会生活が充実したものになっていかないこと】

 

子どもの周りにいる大人たち(支援員)が、こだわりが崩れたことによるかんしゃくをおこすことや、こだわり通りにすることを、

「自閉症なんだから」

「障害児だからしょうがない」

「したくてしているのだから、それを止められたらかんしゃくをおこして当たり前、したいようにさせてあげよう」

というような付き合い方をしたとすると、どんどん彼ら彼女らの社会生活が貧しいもの、不自由なものになってしまいます。

こだわりのせいで、選択肢が少なくなっていくのですから、貧しくなっていって当然です。

そういう人生を自閉症の子どもたちに歩んでほしくないのです。


かくたつ播磨

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