それはその子の性格が悪いのではありません
【なぜ、言った直後に同じことをするのか?】
「ごめんなさい」と言った直後に、同じことをやる。
「ここで待っててね」「うん」と言った途端に、動き出してしまう。
「もうしないでね」「わかった」と言った直後に、またやってしまう。
【理由1:注意された内容は理解している、が、行動をコントロールできない】
多動な状態でいる場合、または、興奮して多動モードに入っている場合というのは、刺激にすぐに反応してしまう状態です。
反応してしまう(動いてしまう)、ということは、理解した内容通りの行動が取れない、その行動を取る自由度がない、とも言います。
そこで注意されたり、やってしまっておいて、また大騒ぎになるのは、子ども自身がそうしたくなかったからです。苦しんでいるのです。どうしたらいいのか困っているのです。
苦しんでいるのですから、それを、この子の性格が悪いからだ、と性格のせいにしてしまうと、解決できなくなってしまいます。
そうして、周囲からの評価が下がってしまう場合があります。
その子自身も、自分自身の行動に自信がなくなったり、やけになったり、他人のせいにしたりしてしまいかねません。
そうすると、パニックが出やすくなったり、また同じようなことをしてしまったり、悪循環におちいります。
パニックを怖がって、パニックになる場面を避けても、日常生活の中で全て避けることはできません。
子ども自身も騒きたくはないから、過剰に警戒するようになります。
過剰に警戒するから、いざ直面すると、さらに騒ぎが激しくなる。
理解している、それだけでは、理解した行動の実行の役には立たちません。
「身体・動き」の自己コントロールが問題です。
意図と動きが一致することが必要です。
そうして、自分自身の身体の動きを信頼し、自信を取り戻すことが重要なのです。
【反応してしまう・動いてしまう状態から脱出するには?】
こちらからの働きかけに対して、子ども自身の意図通りに、身体が動くように応援します。
自分の身体がハンドルやブレーキのきかなくなった車のように行動の統制を失っている状態ですから、安全運転できる状態になるように応援する、ということです。
そして、子どもたちの普段の日常行動が、意図どおり(自分の心のとおり)に、自分の身体を動かせるようにしていく。
そうなれば、「いつも同じことの繰り返し」をしなくて済みます。
運動課題は、ただ運動ができるようになるために、やっているのではありません。
運動の中で、反射的ではない動き、意図と行動が乖離しない動き、ゆっくり丁寧な動き、そういう動きを自分が出来ることを知って、身につけ、自信につなげていけるようにしています。
【例として、こんな場面】
今から何が始まるかわからなくなってしまった…
とか、
ある人の声に反応して、パニックになってしまった…
などなど。
もちろん、
言葉での説明はしています。
言葉だけではなく、絵カードやスケジュール表で説明もしました。
でも、騒いでしまった。つまり、大声が出たり、自傷や他害に発展してしまった。
まずは、その場から離れることになるかも知れません。
興奮・ヒートアップしていますから、ここで言葉で説明しても、落ち着きません。
そもそも、わかっているのですから。説明は意味がありません。
動きを求めます。
「寝て5カウント」
「いいね、できている」「合っているよ」
「座って5カウント」
「いいね、できている」「合っているよ」
例えば、こんな調子で、タイミングをきっちり合わせて褒め、意図どおりに動ける自分を取り戻してもらいます。
最初は、興奮状態だったのが、どんどん落ち着いていきます。
「わかっているのに、興奮しちゃったんだよね」
「あの人の声でちょっとビックリしちゃったよね」
そうすると、こういう気持ちの交流・内面とのやりとりが成立します。
目的は、この気持ちのやりとりで、人を信頼し、自分を信頼することです。
最初は簡単な動きから練習します。
徐々に複雑な動き、頭をしっかり使わないといけない動き、しっかり最後まで聞かなければならない動きを練習して、聞ける人に育てます。
10カウントで終わる予定をしておいて、「あともう10カウントしよう」でも、頑張れる人に育てます。
付き合いの引き出しがないと、薬に頼ることになってしまいます。
そもそも、練習をして、ちょっとのことではブレない人になってもらうことが目標ですし、そうなっていきます。その場から離れなくてもいいような人になります。その場でできる簡単な体操・しぐさ程度の動きでも、自己コントロールを取り戻せるようになります。
普段の生活でも、礼儀にかなった動き、丁寧な動き、丁寧な言葉遣い、具体的な日常生活行動を確立していくことで、多動状態になってしまわないようにすることができる。
【『対人関係』と『対物関係』】
多動状態のままでいると、常に刺激に反応してしまう、つまり、物に支配された暮らしになってしまいます。
そうではなく、人付き合いの中で暮らしてもらいたい。
反射的な行動をおさえ、日常の生活行動が取れるように育てられた人たち、衝動をコントロールすることを覚えた人たちは、キチンと生活できます。
本当の意味でやりたいことがやれる、自由な、張り合いのある生活をおくることができます。
家族が、安心して、一緒に、幸せに、暮らしていくことができます。
【例をもう一つ】
「立たないで、イスに座っててね」と言う。
子どもは「はい」と返事をして、座る。
家事などのために離れる。
戻って見ると、また立ってウロウロしている。
「座っていなさい、と言ったでしょ!」
「はい」と返事して座る。
…
離れる。
立っている。
同じことが繰り返される…。
ここで、この子が学習しているのは、
『親が近くに来て、声をかけたら座れば良い』
です。
本人は正しいことをやっていると思っているのです。
親は、
「離れても座った状態を保っていてね」
と言っているのだが、子どもはそう捉えていません。
あくまで、
「離れていても座ったままでいれた」
ということを評価しなければなりません。
動きのコントロールも必要です。
が、誤学習させてしまわないように、
「座っていてね」
「10カウントね」
「そうね、座れているね」
と学んでもらわねばならないのです。
【個別指導や集団指導で【理由2:叱られた内容を理解できていない】】
こういったコツをお伝えし、実際にやって見せ、それをやっていただいて、実感、習得できるように応援します。
【理由2:叱られた内容を理解できていない】
こういう場合も、もちろんあります。
「ごめんなさい」
「もうしません」
言葉がなくても、うんうんとうなずく。
それでも、やってしまう。
こういう場合、
「切実に」
『やってはいけないのだ』
『本当に許されないんだな』
と「感じて」もらう必要があります。
その具体的な方法も、個別指導でお伝えしています。