人に合わせて動く運動をすることで変わります
【ゆっくり動く・力を抜いて緩む・的確に動く】
「アッ!」と言う間もなく、突発的に叩たり押したりしてしまう。
音で気がついた時には、もう壊れている。
やはり、これでは周囲から受け入れてもらいにくい。
そんな人生を送ってほしくないのです。
興味のある物が見えた瞬間に、もう走り出している。
危険な目にあいそうで、ヒヤヒヤする。
こういう子どもたちの命を守りたい。
叩きたくないのに、壊したくないのに、やってしまう、後悔する。
やってしまうのが分かっているから、やろうとしなくなる。
そんな風にはしたくない。
自分の動きに自信をもって、いろいろな経験をさせてあげたい。
【なぜやってしまうのか?】
刺激に反応してしまう状態は、その刺激物に支配されている状態です。
対人関係より対物関係が優先された状態です。
人の話が耳に入っていても、それに合わせられません。
反射的行動であり、意図が反映された行動ではありません。
そんな状態であれば、やりたくないことでもやってしまう。
気になった、その瞬間に、手や足、口が勝手に動いてしまう。
「しません」と約束しても、自分自身という車をちゃんと運転できない、約束とは違う行動をしてしまういつものコースに乗ってしまう。
自分の言動を自分自身で信用できない、そういう苦しみをかかえながら、懸命に生きています。
子ども自身も苦しいのです、困っています。
【どうすればいいか?】
根本には、多動と衝動のコントロールの問題があります。
共感だけでは解決しません。
また、カードで示したり、約束表をつくったり、色んなことを試しても、上手くいかない場合があります。
「共感」や「約束」と同時に、そうならないために直すべき点を流さず、キチンと動けるように支援することが必要なのです。
カウントを待ったり、言葉を最後まで聞いてから動いたり、ストップandゴーの練習をしたりします。
ゆっくり動く練習やサッと動く練習をとおして、自分の身体を自分で適切に動かせるようにしていきます。
どうしても、反射的な動きやいつもの決まった動きをしてしまいます。それをコントロールできるようになってもらいます。
腕上げコントロールも一つの課題です。
また、人にゆだねて力を抜く、緩む、ということも大切です。
動きは「緩む→動く→緩む…」の繰り返しですから、動きっぱなしでも、緩みっぱなしでもいけません。
【きちんと動けるようになると、どうなるか?】
多動をコントロールし、刺激に反応せずに動けるように支援していくことで、人の話に合わせることができるようになります。
人の話が入れば、多動は止まり、また更に人の話が入るようになります。
そのような動きの支援で動き方が改善すると、対物関係より対人関係が優先されている状態で過ごせます。
対人関係が優先されるのは、人の話に合わせられるかどうか、という意味だけではありません。
こういう状態で過ごせるようになってくると、行動障害や自制できない多動な行動に隠されていた、その人の本性、人間的なものが見えてきます。
見えてくると、周囲の人の本人を見る目・感じる心は、
“いつ何をするか分からない信用ならないヤツ”
というものから
“可愛げのある人”“素直なところもあるのだな”
というものに変化していきます。
付き合っていくのが楽しくなります。
見方や感じ方が変わると、付き合いそのものが変わってくる。そのように変わってくると、本人も、人付き合いも満更ではないと思えます。
よい循環に入ります。
隠れて見えなくても、内側にある人間像を信じ、それを表面に引っ張り出していく。
これが、多動や衝動をコントロールし、しなくて済むようにしていく目的の一つです。
人生や生活に対する“構え”ができてきます。
行動がまとまり、役に立ち、働き、感謝され評価された人は“満更でもない”生活を送れます。
生活リズムは整うべくして整います。
もちろん、こういう生活を送っている人は、他人を押したり、叩いたり、自傷をしたり、そんなことをしなくても済みます。